大正から昭和、平成にかけて、五泉〜村松〜加茂を結ぶ小さな路線があった。
全長21.9km。平成11年に廃線となった蒲原鉄道だ。
その開業時に走っていた車両がきれいに復元整備されて残っている。
県内最古の木造電車、モハ1号。
モハ1号は、蒲原鉄道開業時に導入された定員66人の木製車両。
造られたのは大正12年。
日本で木造電車が造られていた期間はあまり長くない。
これは半鋼製車両の時代に変わる前に製造された貴重なもの。
乗り込むと一瞬でノスタルジックな雰囲気に包まれる。
まるでどこかの古い老舗ホテルに来たようだ。(これは言いすぎました)
車内を歩くと、木の床の感触がとても心地いい。現代の電車には出せない味。
エアコンはもちろんだが、扇風機も見当たらないシンプルな造り。
天井の照明や木の窓枠もレトロな感じ。優しい雰囲気を出している。
電車が展示保存されているのは、かつて蒲原鉄道の冬鳥越駅があった加茂市冬鳥越スキーガーデン。
以前、NHKの番組で火野正平さんが「とうちゃこ」した場所。
正平さんはヘロヘロになりながら斜面の一番上まで登って、視聴者からのお手紙を読んだ。
お手紙の内容は、お母さんと蒲原鉄道に乗ってここへスキーに来たという、幼い頃の思い出。
当時は、冬になるとたくさんのスキー客で賑わったらしい。
でも冬以外の季節の利用客があまり多くなかった上に、
他に大きなスキー場が次々と誕生していく中で、次第に利用する人は減っていった。
そして平成11年、廃線。
しかし、昭和の初期、ここに鉄道会社直営のスキー場があったことがスゴイ!
「電車を降りたらゲレンデ」なんて、現在のJR・GALA湯沢の大先輩だ。
シックな車体色がとてもオシャレ! 後ろに見えるのは、半鋼製車両の「モハ61」。
窓の向こうには緑のゲレンデが広がって。
展示車両だからなのか、元々こうだったのか、運転席との仕切がない。
今これが走ったら、撮り鉄や乗り鉄にとって夢のような車両。
ここ冬鳥越スキーガーデンには、モハ1号の他に、
廃線となるまで活躍した半鋼製「モハ61」や蒲原鉄道唯一の電気機関車「ED1」も展示されている。
どれも今の姿まで整備するのは、大変な作業だったはず。
加茂市の指定文化財とのことで、これからもずっと残してほしい。
もしも、モハ1号がリニア新幹線を見たなら、きっとひっくり返るだろうな。