かつて新潟市の白山前駅と燕市の燕駅を結んでいた新潟交通電車線。
廃線になってもう20年以上経つが、
当時、冬の運行を支えていた「雪のスペシャリスト」が今も大切に保存されている。
新潟市南区の旧月潟駅。
廃線後も有志の方々の尽力で保存されている駅。ここに3台の車両がある。
その中で、ひときわ目を引く、真っ黒な車体の「キ116号」。
1932年生まれのラッセル車だ。
重厚感漂う鉄の塊といった感じで、雪を掻き分けて走る勇姿が見えてくるようだ。
雪が降りしきる中、このライトが照らす暗闇を走っていたのだろう。
男の仕事場という感じのキ116号の内部。木造の車内には配管や機器類が並んでいる。
雪を掻き分ける部分が大きいので、運転席はかなり高い場所にある。
その逞ましい見た目から、雪の中を単独でガンガン走る姿を想像するが、
実はこのキ116号、ひとりでは除雪はおろか動くこともできない。
なぜなら、動力を持っていないから…
名誉のために補足すると、動力がないのはこの時代のラッセル車では一般的なこと。
キ116号が特別なわけではない。
例えるなら、新潟では一家に一台はあるであろう「スノーダンプ」。
当然、スノーダンプだけでは除雪できない。
それを押す「力」があってこそ仕事ができる。
人々の暮らしを大雪から守ってきたラッセル車、キ116号。
でもその影には、いつも背中を押して、ともに路線を守っていたもう一台の存在があった。
それが、今も隣に置かれている、かわいいかぼちゃ色のこの車両…
というわけで、後半へ続く…