〜戻ってはならない時代〜
今まで空いていたスペースに新たな展示物が並んでいた。
それは戦争の時代のもの。自然と背筋が伸びる。
ここまでの展示物は、
昔の不便さは感じるものの、当時の穏やかな日常が想像できて、見ていて温かい気持ちになった。
でも、新しく追加された展示物は、そこだけ空気が重く感じられた。
戦争の時代の写真や手紙、書籍などの品物が並んでいる。
地元の家々に残っていたものだろう。
戦地からの手紙などもあった。
その文字を眺めながら、どんな思いでこれを書いていたのかと考えると、
とてもシャッターを押す気にはなれなかった。
お気楽な散歩に来ただけの私が、興味本位でレンズを向けていいものではない。
カメラを下ろして、ひとつひとつ眺めた。
昭和8年、日本が国際連盟を脱退して、国内に「非常時」の掛け声が高まっていた頃の写真。
「兵士不足の為 現在の高校生、大学生」と付箋に書かれている。
戦時中の書籍や資料。
「軍隊手帳」とか「兵器保存要領」とか、穏やかではない名前が並んでいる。
遺品なのだろうか、いろいろな道具が置いてあった。
昔の雑誌。年季の入ったカラー印刷の本って、独特の雰囲気がある。
懐かしい空間に癒されに来た散歩だったが、
思いがけず、重く暗い時代の痕跡を目の前に突きつけられた。
こんな時代にだけは、絶対に戻りたくない。戻ってはいけない。
教室の隙間から見えた落書き。これは現代の子供のものですね。平和はいい。
帰り際、玄関の隅に置かれていた石標。
これは大正11年、全国に建てられた「道路元標(げんぴょう)」。
それぞれの市町村から県庁までの距離を測るために、目安にした地点に建てたもの。
元々、彌彦神社の一の鳥居前にあったが、役目を終えてここに保管されている。
弥彦の基準地点はやっぱり彌彦神社だったんですね。さすが越後一宮。
今日も静かだった「弥彦村ふるさと学校」。
ここは、子供たちの社会科見学として使われることもあるようだ。
今の子供達が見ても、もう懐かしいなんて気持ちは湧かないのだろうが、
自分と同じくらいの子供達が、昔どんな毎日を送っていたのか、想いを巡らせてもらえたら、
それはとても良いことなのだと思う。
この日は戦争にまつわる資料を見たこともあって、
外へ出る時、玄関の引き戸がいつもより少し重く感じた。
訪れる人は少ないが、ここは昔の暮らしを感じることができる貴重な場所。
これからも残っていてほしい「弥彦村ふるさと学校」でした。