頭上にも眼下にも桜が迫る。その造形に圧倒されながら登っていく。
小山田彼岸桜樹林の後半です。
光を浴びた花が輝いて。
老木が枝を縦横無尽に伸ばし、あたりを覆うように立ち並ぶ。
登っていくと道が倒木でふさがれていた。見渡せば何本も倒れている。
歩いてくる途中にも、地面に落ちた枝が気になっていたのだが、
この斜面ではあちこちで木が倒れていた。
幹の途中から折れた木、根っこから倒れた木…
長い年月を生き抜いていきた木がこんな姿になるほど、この冬の雪は厳しかったようだ。
ここでこんな景色を見るのは初めてだった。
倒れた木を迂回して先へ。
あらためて眺めてみれば、途中で折れた木がたくさん立っている。
今年だけに限ったことではなく、今まで何度も折られながらも生きてきたのだろう。
ここにもシラネアオイが植栽されていた。優しい花にほっとする。
樹林の斜面を登りきって、見晴らしのいい広場に到着。ここが周回コースの最高点。
街や田んぼを眺めながら、風が通る東屋で休憩。天気もいいし気持ちいい。
この一帯には自生の桜がたくさんある。まわりの山もきれいな桜模様。
ここから周回コースに沿って下りることもできるが、それだと樹林はもう見れなくなる。
もう一度見たくて、来た道を引き返すことにした。
力強い幹、躍動感のある枝。どこを見上げても生命力があふれている。
なおのこと、倒れたり折れたりした姿を見ていると切なくなる。
地面に落ちた枝たちが花を咲かせていた。
落ちた枝は来年はもう花を咲かせられない。これが最後の花…
そう思いながら見る花は健気で美しく見えた。
斜面を降り、東屋のある広場まで戻ってきた。
あらためてあたりを見渡すと、倒れた木や枝があちこちに。
広場から最初の斜面を降りていく。
陽を浴びたヒガンザクラの巨木たちを何度も何度も振り返りながら。
久しぶりに見頃に来れた小山田彼岸桜樹林。
青空に咲き誇る彼岸桜は力強く美しかった。
と同時に、自然界で生き抜くことの厳しさも目の当たりにした。
できることなら、その美しい姿をずっと見せて欲しいと願いつつ帰路に着いた。