池の桜が散り始めていた。水に浮かんだ花びらもまた美しい。
お松の池の続きです。
去年も早かったが、今年の桜はそれ以上に早かった。
去年は急な満開に驚いているうちに、あれよあれよと見頃が過ぎていった。
その経験から心の準備ができていたのか、今年はいくつかの場所で花見ができた。
でも、早く咲けば早く散る。
紅葉を見ていても同じ思いにかられるが、この景色がもっと長く続かないものかと思う。
瞬く間に散ってしまうのを知っているから、より美しく感じるのかもしれないが…
お松の池の満開の桜も少しだけ散り始めていた。
この池には、名前の由来になった「お松」という女性の逸話が残っている。
昔、この村に嫁いできたお松という娘がいた。
姑は村一番の機織上手で、機織に不慣れな嫁を早く一人前にしたいと厳しく指導した。
お松は一生懸命に織り続けたが、なかなか姑の気に入る機ができず、
だんだんと気落ちしていった…
何年か経ち、お松は命を削るようにしてついに渾身の一枚を織り上げた。
それはかつて無い見事な出来栄えで、大変な高値で引き取られた。
姑はようやく素晴らしい織り手となった嫁を褒めようとしたが、
心身ともに疲れはてたお松は、すでに池に身を投げて命を絶っていた… という悲しいお話。
こういった話は、最後に神がかった不思議な力が現れてハッピーエンドになったりするものだが、
これは何かの教訓? やっぱり実話? 可哀想すぎる話…
金色に輝く鯉が一匹姿を見せた…
桜花 何が不足で ちりいそぐ 小林一茶
さまざまの こと思ひ出す 桜かな 松尾芭蕉
散る桜 残る桜も 散る桜 良寛 昔からいつも人の近くにあって、たくさんの俳句や詩にも詠まれてきた桜。
嬉しさ、儚さ、優しさ、切なさ…
不思議なことに、「桜」をモチーフにして詠まれると、どんな感情も腑に落ちる。
桜と日本人の素敵な関係。
終わる瞬間から一年後が恋しくなる花があるなんて、幸せなことだと思う。
来年また会えるのを楽しみに…