ブナやミズナラの森に抱かれ、ヒメマスが棲む神秘の湖。
奥会津の山の上にある沼沢湖へ。
ここ数年足が遠のいていたが、久しぶりに福島県金山町の沼沢湖へ。
美しい外輪山に囲まれたこの湖は、
11万年前の噴火に始まって、数万年間隔で噴火を繰り返し、火口が数回にわたって陥没してできたカルデラ湖。
約5600年前の噴火で誕生したと言われているが、
伝説によれば、1200年前の奈良時代の地震で、小さな池が一夜で湖になったという。
気の遠くなるような時間をかけてできあがった湖。
ちなみに、有史以降の火山活動は記録されていないということなので、今日も大丈夫だろう。たぶん。
透明度が福島県内一と言われる湖水。
標高は475m、直径約2km、周囲約7kmで、最大水深は福島県で最も深い96m。
ヒメマスの養殖も行われ、下流の水田を潤す大事な水源でもある。
この日は雲が多くて、到着した時はどんよりした湖の景色に、あらら… という感じだったが、
だんだん雲が晴れて、陽が射し始めた。
木洩れ陽が眩しいキャンプ場の前を通り、湖畔の道を歩いていく。
まだがんばっていたアジサイ。
頭上を覆うモミジに夢中になっていたら、首が痛くなった(笑)
鮮やかな真っ赤なモミジも。
落ち葉を踏みしめながら、湖岸の道をゆっくりと。
今まで途中までしか行ったことがなかったが、少し奥まで歩いてみよう。
いろんな木のシルエットが面白くて時々立ち止まりながら、
柵の上から撮っているので、みんな似たような構図。その分、木の形を楽しめた。
道端で見つけたきれいな葉っぱ。
道はカーブして陽の当たる方向へ。湖面がキラキラ。
のどかな里山の風景が広がっていた。
岸辺の道はまだ先へ続いているが、ここで左に折れて小高い山の方へ。
次にここへ来たら、行ってみたいと思っていた神社があった。
大きな杉が並ぶ参道にはいくつかの鳥居が。
小高い山の上に建っていたのは「沼御前神社」。
沼沢湖にはこんな伝説がある。
昔、この湖には沼御前(ぬまごぜん)と呼ばれる雌の大蛇が棲んでいた。
髪の長さが2丈(約6メートル)もある若い美女に化けて陸に上がり、
人を惑わせたり襲ったりし、近隣の村人たちから恐れられていた。
鎌倉時代。
これを聞いた、当時の領主・佐原十郎義連(さわらじゅうろうよしつら)が大勢の家来を率いて大蛇を退治した。
首を湖岸に埋め、その霊を慰めるために神として祀ったというのが、この沼御前神社。
以来、大蛇の霊は美女に姿を変え、神社の前面下方断崖の深い棚状の所で終日機織りをしているといわれ、
明治、大正期には機織りの神様として織女の参拝が多かったという。
祭神の名は浜姫(はまひめ)の命と言い、江戸時代から旧6月19日に祭礼が行われている。
数年ぶりに訪れた沼沢湖。
静かな雰囲気が好きで何度も来ている場所だが、
初めて神社に参拝して由緒を知ると、また違う目で風景を眺められる気がした。
大蛇伝説というファンタジーが残る湖は、この日も静かだった。