広縁の床に緑が映り込んでいた。
自然とうまく付き合いながら暮らす邸宅の、美しい夏のワンシーン。
新座敷を見学して戻ろうとしたら、映り込んだ緑に足が止まった。
夏は緑、秋は赤。開け放たれた広縁に、美しい自然の色が沁み渡る。
ひょうたんのような形をした埋め木細工。
修繕の跡もこうなると粋なアートになる。それとも初めから施した遊び心だろうか。
土間の近くに置かれた大きな湯桶は、経を読む前に身を清めてもらうための、お坊さん専用の風呂。
主屋を出て、裏庭へ。
裏口の正面にある「長谷川家収蔵品展示室」へ。
長谷川邸は、映画などのロケ地によく使われていて、
映画「峠 最後のサムライ」の他、大林宣彦監督の「この空の花」や
東映映画「蔵」などもここで撮影が行われたらしい。
ロケの様子を伝える写真や、出演者のサインなどが飾られていた。
長谷川家に伝わる書画や調度品などが並ぶ展示室。
1688年(貞享5年)の絵図に描かれた長谷川家住宅。
森鴎外から送られた書(和歌)。
美しい蒔絵の重箱、備前磁器の皿など、きれいな調度品がたくさん。
九谷焼の大皿。
これは金平糖入れの皿、だそうです。
明治末ごろに撮影された写真。裏庭でテニスとはリッチですねぇ。
上の写真と比べると姿を消した蔵もあるが、今もいくつかの蔵が国指定重要文化財として残されている。
平日ということもあって、この日、他に見学者はいなかった。
暑いなか、庭の手入れをしている方の姿があった。
久しぶりに訪れた長谷川邸。
300年以上前屋敷が今もきれいに守られていて、穏やかな時間を過ごすことができた。