春になると、あちこちで見かける小さな白い花。
道端、公園、庭、どこにでも咲いている様子は、素朴な春の風景。
子供の頃から当たり前に見ていた白い花。
雑草に混じって白い花がいつも咲いているよな〜、くらいに思っていた。
実は季節によって、2種類の違う花を見ていたのだが、それにも気づかなかった。
名前はなんとなく知ってはいたが、
2つの花をちゃんと意識したのは、たぶんユーミンの曲がきっかけ。
もうかなり昔に発表されたアルバム「紅雀」。
地中海のような、南米のような、異国の香りが漂っていて、
でもなぜか日本の情緒も感じる、静かで地味〜な感じのアルバムだった。
その独特なムードが心地よくて、そのレコードに何度も針を落とした。
アルバムの中でも一番好きだった曲が、「ハルジョオン・ヒメジョオン」。
抒情的なメロディ、絵画的な詩、控えめな歌声。
情景描写だけで心情を浮かび上がらせるのはユーミンの真骨頂。
40年以上経った今でも、たまにコンサートでも歌われるし、好きな人も多いと思う。
似た2つの花の名前を並べ、韻を踏んだタイトルも新鮮だった。
(ちなみに、実際の歌詞に出てくるのはヒメジョオンだけ…)
実は「ハルジョオン」というのは俗名で、標準和名は「ハルジオン」。
私はそれまでなぜか俗名の方で呼んでいたし、
大好きな曲に敬意を表して、ここでは「ハルジョオン」で書かせていただきます。
最近出かけた散歩の途中にも、あちこちで咲いていた。
この時期に見れるのはハルジョオン。
雑草の茂みの中に、小さな白い花が風に揺れている。
一面の花畑〜 ではない雑草の茂みなのだが、のどかで優しい春の光景だ。
虫も集まってくる。
ハルジョオンは100年くらい前に観賞用として日本に持ち込まれた外来種。
生命力・繁殖力がとても強く、あっという間に広まった。
私の職場の駐車場で、アスファルトの隙間から出てきたハルジョオンが花を咲かせた。
しかし誰も「ど根性ハルジョオン」と讃えてはくれない。
たくまし過ぎるがゆえに、場所によっては厄介者の雑草扱いだ。
「貧乏草」なんて不憫な呼び名まであるそうな…
けっこう可憐な花なのに…
これ、実は食べれるらしい。
もともとキク科の植物なので、茎や葉はアク抜きしておひたしに、花の部分は天ぷらにするとか。
少し苦味のある春菊のような味で、糖尿病にもいいらしい。
でも、山菜を採る人はあちこちで見かけるが、ハルジョオンを摘んでいる人を見たことがない。
ハルジョオンとヒメジョオン。
私もずっと区別がつかなかったが、ちょっとコツを覚えたら、だいたいわかるようになった。
見分ける方法を少しだけ。
まずは、咲く時期が違う。
ハルジョオンが咲くのは春(4〜6月頃)、ヒメジョオンは夏(6〜10月頃)。
春から夏までずっと似たような花が咲いてるな〜と思ってしまうが、春と夏では違う花。
二つ同時に見れる時期は案外短い。今年はまだ、ヒメジョオンは見ていない。
次に、花びらの太さが違う。
(紛らわしいものもあるので完璧ではないらしいが…)
まず、下の写真はハルジョオン。花びらが糸のように細〜い。
色は、白以外にピンクがかったものも多い。
(ここまでの写真はすべてハルジョオンです…たぶん)
下の写真が、これからの時期に咲いてくるヒメジョオン。
花びらがやや太いのがお判りでしょうか。
見分ける方法は他にもあって…
ハルジョオンは葉っぱが茎を抱くように付くが、ヒメジョオンは普通(?)に付く…
(これはわかってしまえば、かなり有効な見分け方)
茎を折ってみて、ハルジョオンには真ん中に空洞があるが、ヒメジョオンには空洞がない…
(折るのは忍びないのでしません)
ここからは、ヒメジョオン(だと思う)写真を少しだけ。
今シーズンはまだ見ていないので、過去の写真から。
どちらもキク科だが、ヒメジョオンの方がキクっぽさはある。
日本に入ってきたのは、こっちの方が少し早いらしい。
これも生命力・繁殖力が強く、あっという間に日本中へ。
これからの季節は、このヒメジョオンがどんどん咲いてきます。
これはハルジョオン。
野山に咲くかわいい姿とは裏腹に、
そのたくましさゆえ、「要注意外来生物」として厄介者扱いされている、ちょっとかわいそうな花たち。
職場の駐車場に咲いた「ど根性ハルジョオン」は、
その後、会社の一斉清掃日に、他の雑草とともにきれ〜に刈られてしまった。
もしそれが、バラやチューリップだったら、はたして刈られただろうか…
見栄えのする観賞用の花も素敵だが、
足元に咲いている何気ない花には、また違った良さがあるもんです。
私の子供の頃からの春の記憶の中には、
この小さな白い花がたくさん咲いている。