鮮やかなのに派手じゃない。ふかふかなのにしっとりしている。
お寺の境内や庭園などでよく見かける苔。
見ていると自然と心が落ち着くのはなぜだろう。
杉木立に囲まれた参道が続いている。
苔に覆われ、何とも言えない落ち着いた雰囲気があたり一面に漂っていた。
もし、この道を人がたくさん歩いていたら、この景観は生まれなかっただろう。
私も踏んでしまうのがはばかられ、自然と脇の方から写真を撮っていた。
苔には根が無く、水分や養分は空気中から吸収するらしい。
土壌を必要としないので、石の上でもどこでも生えてくる。
日本には 1,600 種類ほどあるそうだ。
昔から私たちの身の廻りに当たり前のようにあって、
わざわざ気に留めて見るようなモノではなかったかもしれないが、
最近はその魅力が再認識され、
苔の観察を目的に出かけたり、自分で育てたりするファンが増えているらしい。
以前、石川県小松市の「苔の里」という山あいの静かな場所を訪れ、色々な種類の苔を見たことがある。
望遠レンズをルーペがわりにカメラ越しに観察すると、
緑色の絨毯にしか見えない苔が、小さな一本一本の植物だとよくわかる。
花火のようなもの、水草のようなもの、どれも生命力に満ちていて、
静かで控えめなイメージとはまったく違う、「元気いっぱい生きてるぞー」という姿に驚いた。
国歌の歌詞にも登場し、長久の時を思わせる苔。
風化して時が経ったものが苔に覆われ、やがて朽ちていく。
その姿を美しいと思えるのは、日本人の美意識というものかもしれない。
加茂市 嶽山寺